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西野つかさを応援するスレ Part29

494 名前:河下水希さんの将来の旦那ですヽ(`Д´)ノ ◆WEST/.ou4Q 投稿日:03/03/20 16:45 ID:WHCMzfFC
 わたしは待っている、到着を、帰還を、約束の徴候を。ときにはごくつまらないものであるかもしれず、大層に感動的なものであるかもしれない。『エルワルトゥング(待機)』(シェーンベルク)では、夜半の森で女がひとり恋人を待っている。
今わたしが待っているのは一本の電話にすぎない。しかし苦悩に変りはない。すべてが深刻なのである。わたしにはつりあいの感覚がないのだ。

(中略)
ベルが鳴るたびに大急ぎで受話器をとる。愛する人がかけて来たのだと思う(あの人はかならずかけてくるはずなのだから)。たしかにあの人の声だと「認める」のにさして努力はいらぬ。会話をはじめる。
ところが、せっかくの錯乱からたちまち目覚めさせられ、邪魔者にやつあたりするはめになってしまう。
カフェの場合でも、入ってくる客たちはみな、ほんの少しでも身体つきに似たところがあれば、ひとまずはあの人だと「認められる」のである。
 恋愛関係が鎮静してからも、わたしは、愛した人のことを厳格に捉えるかつての習慣を保ちつづける。なかなか電話がかかってこないといって、あいかわらず苦しんでみたりする。
よけいな電話をかけてくる邪魔者の声に、かつて愛した人の声を認めたように思う。そのときわたしは、切り落としたはずの脚になおも痛みを感じつづける者である。

(中略)
 昔、中国のある高官が歌姫に恋をした。「わたしの部屋の窓の下で、床几にすわって百夜お待ちくだされば、あなたのものになりましょう」、女はそう言った。
九十九日目の夜、くだんの高官は立ち上がり、床几をこわきに立ち去ってしまった。

 ―ロラン・バルト『恋愛のディスクール・断章』

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