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西野つかさを応援するスレ Part24

1 名前:作者の都合により名無しです 投稿日:03/02/23 22:53 ID:fO/HollW
いちご100%の西野つかさを応援するスレです。
つかさファンが集う場所です。
東城・北大路ファンは控えめに。
東城・北大路叩きも控えめに。
他派を刺激する内容はスレ内完結で。
このスレでのいちご100%のヒロインは
どんなことがあろうと西野つかさです。
煽り・荒らし・その他、マターリマターリを壊す輩は「完全放置」で。
なりきりは禁止。

前スレ
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397 名前:『February 7th cold』(1/11) 投稿日:03/02/25 23:52 ID:2dQwjWvY
二月七日。

六間目の初め頃から降り始めた雨は、HRが終わる時にはもう本降りになっていた。
「なによこの雨!なんなの!?なんなの!?バッカじゃないの!?」
 と、嘆く友人もつかさも、傘はなし。
 気象庁の大嘘つきと叫んでも、傘がないのは変わりなし。
 仕方がなしに、二人は濡れるにまかせて商店街のアーケードまで走ることにした。
 商店街内にあるマックに寄って、暇つぶしがてらに天気の機嫌を伺う計画である。
「ああっ、なんつうか最悪!冷たい!うわっ、雨が口ん中入ったし!寒っ!」
寒い冷たい濡れるだのと、
走りながら喚く友人につかさは苦笑する。
「喋ってるからだよ!ほら、風邪ひかないうちに走ろっ!」
 疾走するつかさの背中を、容赦なく雨粒が叩く。
 二月も上旬の雨はみぞれまじりでぐしゃぐしゃで、気が滅入る。
 もしも傘が一つでもあったのなら、相合傘でもできるのだが……。
 どうせなら、相手は友人よりも違う人がいい。
 走るつかさの頭の中に、今一番相合傘をしたい人の顔が浮かんだ。
 でも、それはありえないことだった。
 その人には、私よりも好きな人がいる。
そう思っただけで、心臓よりも深いところが切なく痛む。


398 名前:『February 7th cold』(2/11) 投稿日:03/02/25 23:53 ID:2dQwjWvY
 誤って、水たまりにつっこんだ片足が泥を跳ねちらかし白いソックスが、泥色に汚れた。
 雪になりそこなった冷たい雨を避けて、商店街のアーチの下にようやく辿りつくと、
 二人はほっと息を吐いた。
「あ〜あ、もう髪の毛ぐしゃぐしゃ! つかさもびしょぬれー、私もびしょぬれー。
 二人合わせてミズビタシスターズになっちゃたよー……」
「なぁに言ってんだが……まったく。さっさとマック行こう」
 つかさは、水分を吸って重くなったコートに辟易しつつ、
 呆れたような顔で歩き出した。友人も、とぼとぼとその後を追う。
「あー、クラムチャウダー早く飲みてぇ。体あっためてー。で、つかさはなに食うつもり?」
「うーん、そうだなぁ」
 人差し指で、水が滴る前髪をつまみながらつかさは考える。
「あたし、カスタードパイがいいな」
「非常に残念だけど、きのこシチューパイのせいで今は売ってませんよー」
「じゃあ、アップルパイとレモンティーで決まりだね」
「つかさってさ、マック行くたびにアップルパイ食ってない?好きなの?」
「本当はチェリーパイが一番大好きなんだけどね」
 上目遣いでにっこり笑ってそう言うと、友人はやれやれと肩をすくめた。

399 名前:『February 7th cold』(3/11) 投稿日:03/02/25 23:55 ID:2dQwjWvY
 つかさは、やはり顔に張り付く前髪が気になるのかしきりに触りながら歩いていたが、
 ふと視線が横に向け、派手に装飾されたケーキ屋に釘付けになった。足が止まった。
「つかさ?どしたの?」
「……うん」
 友人も足をとめて、その季節限定の飾り付けに目を向ける。
 するとでっかいため息と笑い声が、その口から出た。顔が引き攣っている。
「……そっか、もうすぐバッレンッタインなんだよね!……あはは……ははっ!」
「どうかしたの?」
「……あはは……ははっ……」
「なんかたいへんそうだけど、大丈夫?」
「……ぁははっ……」
「……ねぇ、どうかしてんのはそっちじゃないの?」
「……」
友人の動きが止まった。まっ白に燃え尽きている。
完全不燃焼を起こしたその背中に焦るつかさ。どうしようかと思ったとき、
「……私さ、バッレンタッインっていい思い出ないのよ……なぜか分かる?」
「さ、さぁ……」
 聞いてしまってから、つかさはわりと本格的に後悔した。おおげさなため息が目の前に吐かれた。
「チョコって……チョコ作りと私、相性悪いのよ……だから、毎年チョコあげては失敗の繰り返しなのよ……」
 チョコ作りって別に相性の問題じゃないぞ、とつかさは思った。

400 名前:『February 7th cold』(4/11) 投稿日:03/02/25 23:56 ID:2dQwjWvY
 それから五分後。二人は、本屋にいた。
 マックのクラムチャウダーはどこへいったのかと、聞きたかったけれど、

 チョコ作り→クッキング→クッキングスクール→西野つかさ御用達。

 という、友人独自の論理展開により、突然、今度の日曜日に一緒にコツを教えがたら、チョコを作ることになったのだ。
「あのさ、チョコなんて溶かして固めるだけじゃん。コツなんてないってのに……」
「だーかーらー、その簡単なことができないんだってば!」
「ハイハイ……しょうがないなぁ、もう」
 雨宿りの暇つぶしに立ち読みをする客たちをかき分け、二人は料理の本のコーナーに行く。
この手のシーズンなだけあって、
様々なお菓子のレシピ本が平積みになって、ちょっとした空間が出来上がっている。
「やっぱさ、今年こそ本命落としたいからさぁ、どうせならそれなりにカッコいいの作りたいよねぇ」
「本命かぁ……で、コクるの?」
「あったり前じゃん!その気がなきゃ、こうしてつかさに手伝い頼まないわよぉ」
 ふぅんとうなずき、つかさは何気なく本を物色する友人の顔を見る。
 自分も、気に入りの出版社の本を手にする。


401 名前:『February 7th cold』(5/11) 投稿日:03/02/25 23:57 ID:2dQwjWvY
「ねぇ」
「なに?」
「もし、もしもだよ」
「だからなに?」
 つかさは、気が抜けたようなまっさらな無表情で、手にした本をパラパラとめくりながら言った。
「もし……告白して、駄目だったらどうするの?」
「かーっ!可愛い顔してこの子は、いきなりすごい嫌なこと言うな!」
「もし、告白した相手に、他に好きな人がいたら?」
「……そりゃ、それ相応に悲しい」
「諦めたりできる?」
「つーか、その場合は諦めるしかないだろ」
「……だよね」
 つかさは、開いた本を勢いよくパタンと閉じ、その本を友人に差し出した。
「この本なんかいいんじゃない?解説とか分かりやすいし、そこそこお菓子のデザインも可愛いし。イイ線いってるんじゃん?」
「つかさがそう言うなら、うん。それにしよう。そうしよう。」
 本を受け取り、友人は照れたような顔になって混雑したレジへと向かった。


402 名前:『February 7th cold』(6/11) 投稿日:03/02/25 23:58 ID:2dQwjWvY
本を持ってさっさと会計に行ってしまう友人の後につきながら、つかさはぼんやり考えた。
(だよね……やっぱり、諦めるしかない……よね。……やっぱり、悲しいよね)
 不覚にも本人の意志とは関係なく、涙が出そうになったので鼻を啜って、それをごまかす。
 それを何回も続けていたら、店を出たときに風邪?と聞かれた。
 つかさは、そうかもね、と肩をすくめる。
「あーあ。やっぱし、このむさ苦しく寒い雨の中強行突破はキツかったか」
「マック寄る?クラムチャウダー飲みたいんでしょ?」
「いやいや、こんなカワイコに病気させるほど、私は悪党じゃないわよ」
「じゃ、ここは素直に帰るとするか」
「そーしよ、そーしよ!」
 と、歩きかけたところで、友人は盛大なくしゃみをした。
「……私という美人の健康のためにもね」
 

 電車通学の友人を駅の改札で見送る時、彼女はさきほど買った本をつかさに渡そうとした。
「レシピとか見ても、私にゃピンとこないからさ、これ見てつかさが作りたいの決めてよ」
「え?」
「私じゃ、その本の写真とか見てもあの高校球児はいったいなにが好きなのかって、悩んだあげく、決めらんないと思うの。
それに、今回はつかさのチョコレートにもなるんだし、西野つかさに決めてほしいのよ」
「はぁ?」
 首を傾げてつかさは怪訝そうな顔になる。


403 名前:『February 7th cold』(7/11) 投稿日:03/02/25 23:59 ID:2dQwjWvY
「あたしなんかでいいの?」
「つかさだからいいの!……私、つかさのこと好きだし、信頼してるしさ」
「なんで?なんでそこまでして渡そうとするの?」
「なんでって……相変わらずどっかずれてる子だなぁ……もう」
 つかさに渡そうと突き出していた本を、ちょっとひっこめ、友人はきょとんとしたつかさの額をそれで小突いた。
驚いてビックリ目になったつかさにこう言う。
「あんたの言うとおり、告白したって100%ラブラブな展開になれるってわけじゃないし、断られる可能性ってやっぱりあるじゃないの。断られるのはたしかに恐いわよ。
……でもさ、バレンタインって、恐くても、自分の……うん、なんつうか自分の気持ち?
そういうの、言葉にしたらクサくなって伝えたいことが台無しになる気持ちってあるじゃん?」
 ワケが分からないとつかさは思った。でも、少し考えてからこう言った。
「……思ったんだけど、なんか一方的だよ。それ。もし、向こうに他に好きな人がいたとしたら、勝手に自分の気持ち押し付けなんてしたら、ただの迷惑じゃない。
振られるなんて、カッコ悪いし、第一後味悪すぎ……」
自分では冗談めかしたつもりだったけど、どうしても顔は困ったように悲しくなっている。
言った事は本音だった。しかも、実体験を通した考えだった。
「……つかさ、今日あんたそればっかね。なに?別れた男となんかあったの?」
 友人の指摘は、凄く痛いとこをついていた。つかさは、顔を上げようとしたが、バツが悪くなってうつむいてしまった。


404 名前:『February 7th cold』(8/11) 投稿日:03/02/26 00:00 ID:zsTYJVxb
「他に……好きな人、ね。うーん、そいつはキツイやね。……でも、なんかさぁ、つかさ思
込みすぎっつーか、考えこみすぎっつーか、なんか違う気がするよ。それ」
「……でも、他に好きな人がいるのに、一方的に押し付けるなんて迷惑だよ」
「私は、好きな人がいるとかそういうの、関係ないと思うわ」
 その返答に、つかさは友人の顔を見上げた。彼女は、いかにもつかまりどころのなさそうなつかさを見て、決まりが悪そうに鼻の頭をかいた。
「関係ないよ、うん」
「……なんで、そう思えるの?」
「いや、なんでって聞かれても……やっぱ、告白するって自分の気持ちにケリをつけようっていう、ことでしょ?
自分の気持ちの問題なんだから、そりゃたとえ相手でも、他人の気持ちなんて知らないわよ」
「でも、それって自分勝手だよ」
「そうだよ。自分勝手だよ。あくまで、自分の気持ちの為にコクるんだからね」
 つかさは、また黙った。黙ったまま、ただ友人の表情を見ていた。
「恥ずかしいこというけど、伝えたいって思う時って、苦しいよ。相手がどう思おうと、他人から見たらただの自分勝手でも、好きだって思うだけで辛いときもあるのよ。
それが嫌だから、コクってなにが悪いのよ。伝えなきゃ、なにも終わらないし、なにも始まらないでしょうが」
 相合傘、という三文字が、とつぜん頭に浮かんだ。……今一番、同じ傘の中にいたい人。
 つかさに本を押し付けると友人は、電車に乗って軽やかに去っていった。


405 名前:『February 7th cold』(9/11) 投稿日:03/02/26 00:01 ID:zsTYJVxb
 その夜も、まだ雨が続いていた。
 午後からずっと降っていたせいか、家の中でも寒い気がする。
 帰宅してから、着替えてご飯食べてお風呂入ってTVを見ている間も、耳のどこかでぐちゃぐちゃになったみぞれの音がしていた。
 11時を過ぎた自室のベッドの上には、友人から渡されたチョコレートのレシピ本を開いているつかさがいた。
 やっぱりこの出版社の本は読みやすいな、
 なんて思いつつペラペラと頁をめくるうちに、つかさの目はある頁で止まった。
 小さなトリュフが四種類。箱に入った状態の写真が載っている。
 ココナッツにパウダーシュガー、ココアパウダーにチョコチップをまぶしたトリュフは見た目もなかなか良く、おいしそうだ。
 それに、その脇に書かれた文章も、気になった。

――甘いものが苦手な彼も大満足な、シックなビター系トリュフ

 ビターという言葉に、どこか懐かしい気持ちがこみ上げてきた。


406 名前:『February 7th cold』(10/11) 投稿日:03/02/26 00:02 ID:zsTYJVxb
『そういやさー、もうすぐバレンタインだね。順平くんってチョコ好き?』
『……え、えっ?……なんの話?』
『あー、また聞いてなかったなぁ。しょうがないなぁ、もう。チョコだよ、チョコ!』
『あっ!ああっ!あ、チョコね、チョコ……って、まさか西野くれんの!?』
『まっさか!あたしたち一応受験生だぞ。そんな暇はないよ』
『うっ……そ、そりゃぁ、そーだよな……うん。ハハッ、お、おれ甘いの苦手だから、食べるならビターのがいいなぁ……』

 去年の今ごろ、二人でこんな話をしたことがあった。こういう話をしていた日もあった。
「順平くんは、まだ甘いの苦手なのかな?」
 呼びかけた人は、いったい今なにをしているんだろうか。
『コクってなにが悪いのよ。伝えなきゃ、なにも終わらないし、なにも始まらないでしょうが』
 友人の台詞が、耳に痛い。
 つかさは、ベッドの上に本を投げ出すと、膝をよせそれに頭を埋めた。
 この一年間。考えてみると、一緒に入れた時間よりも、はるかに離れている時間の方が多かった。
 離れている時間の圧倒的長さの生々しさに寂しさを感じ、それでも彼のことを考えると理屈ぬきで感情が空回りする自分を発見してしまう。


407 名前:『February 7th cold』(11/11) 投稿日:03/02/26 00:03 ID:zsTYJVxb
 順平くんはたぶん、あたしよりも東城さんの方が好きだ。
 そのことは随分と重いことだと、つかさは思う。
 でも、やっぱり自分は順平くんのことが好きなんだと、妙なところで嬉しくなってしまう。
 まだ彼の事が好きでいられる自分が嬉しかった。でも、本当は別れたくなかったのに、形だけの交際に耐えられなくなってしまった情けない自分を見つけて泣きたくなる。
 諦めようと思ったのは全部、自分のためでなく順平くんの為だったのに。わがままな話だ。
『自分勝手だよ。あくまで、自分の気持ちの為にコクるんだからね』
 相手の為にと関係を終わらせたのはつかさだ。でも、それだって結局は自分勝手なのだ。
 順平くんはもしかしたら、東城さんのほうが好きかもしれない。
 でも、つかさだって好きなのだ。好きで好きで、そのことを今すぐ彼に叫びたいのだ。
 その結果がどんなに苦しくたって、その気持ちに変わりない。
 つかさは膝から顔を上げた。
 できることなら、今まで自分がどれほど好きだと思うことで救われたことがあったかを、真中順平に言いたい。
 後で悔やむこともあるかもしれないけれど、伝えようと、つかさは決心する。

 気がつくと、雨はもう上がっているけれど、二月七日の窓の外は、まだ寒かった。
 立春もすぎ、もう少ししたら季節は春になる時分である。


――おわり


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